2023年1月で、かきかたプリントメーカーをリリースしてから4年になりました。
誕生の経緯
かきかたプリントメーカーは、2019年の1月に生まれました。年末年始に家族で帰省してのんびりしていた時のこと。お正月になると子供がちょっと退屈しはじめてしまいました。何冊か用意しておいた塗り絵の本やひらがなや迷路のドリルもやり尽くしてしまい、ネタ切れ状態。そこで「好きな言葉で文字の練習ができるようにしよう」と思って作ったプログラムが「かきかたプリントメーカー」の原型です。
最初は、既存の「IPAフォント」を使用し、文字を矢印を入れた画像を並べるという非常にシンプルな仕組みだったのですが、近所のコンビニで印刷して娘に渡してみたら大喜び。好きな言葉でたくさんのプリントを作り、こんな具合で、子供の興味に合わせてアニメやゲーム、鉄道や恐竜、お友達や家族の名前といったテーマの教材が作れたら多くの子供が楽しんでくれるに違いない……ということで、Webサービス「ひらがなプリントメーカー」として一般公開しました。
Twitterでちょっとバズったり、ねとらぼさんの記事でご紹介いただいたりして思いのほか広まってしまってしまいました。さっそく使っていただいた方から「カタカナにも対応してほしい」とのフィードバックを頂き、急いでカタカナに対応。「ひらがなプリントメーカー」という名前はその日のうちにボツになり、今の「かきかたプリントメーカー」に変わりました。
改良を重ねる
自分の娘のためのちょっとしたツールとしてリリースしてから4年、かきかたプリントメーカーはどんどん改良を重ねました。たとえば
- 手書きに近い字形のオリジナルフォントデータの開発 (ひらがなから小学校5年生で習う漢字まで対応)
- 文字の太さや色など、色々な書式を選べる仕組み
- 「穴埋め問題」「絵日記」「お習字ごっこ」などのさまざまなスタイル
- 色による書き順の表現
- 「へのへのもへじ」「ビャンビャン麺」などのお楽しみコンテンツ
- 印刷せずに画面上でなぞる機能
- 「書き順アニメーション」「タイピング」などの新コーナー
……という具合に、家庭でのちょっとした遊びから教育の場での教材作りまでカバーする、かなりしっかりしたサービスになりました。今では、家庭はもちろん、保育園や幼稚園・学校・学童保育・オンラインの日本語教室など、さまざまな場で使われています。
さまざまな利用シーン
利用者の方々からたくさんのフィードバックをいただきました。ときどきAmazonギフト券でご寄付をいただくこともあり、本当に助かっています。メールやTwitterで寄せられるご意見やご要望、「こんな風に使っています」というご報告から、多様なニーズがあることがわかりました。また、「日本語のかきかたの学習」をめぐるいろいろな問題を知ることになりました。
たとえば、外国出身の方の場合。家庭環境や来日した時期、おうちの方のバックグラウンドによって習熟度はさまざまで、ちょうどよい既存の教材が見つからない場合もあります。外国出身、もしくは外国にルーツを持つお子さんの多い地域では、日本語の習得を支援する活動が盛んです。そういった場では、生徒さんのニーズに合わせて先生が教材を自作することも多いそうです。また、外国から日本に来た大人が日本語を学習する場合、日常生活やビジネスシーンで頻出する言葉を集めた実用志向の教材が必要とされることもあります。
それから、子供の発達支援の場でも個人に合わせた教材を作りたいというニーズがあります。その場合、教材を作る際には特別な配慮も必要になります。たとえば、「濃淡の激しい物を見ていると疲れてしまう」「余分な絵や字、記号などがあると集中できない」といった困りごとを抱えるお子さんの場合、より刺激が少なく、余計な情報の少ない教材を使うことで気持ちよく学習を進められるようになるそうです。そうした話を参考にし、かきかたプリントメーカーでは選べる文字色を増やしたり、書き順を数字ではなく色彩で表現したりする機能を追加したりしました。今後は色々なタイプの色覚に対応できるよう、更にいくつかの種類のカラーパレットを用意することを考えています。
また、「かきかたプリントメーカーで作ったプリントを画像ファイルとして保存し、タブレットのお絵かきアプリに取り込んで画面上でなぞり書きする」という使い方をしている方がいらっしゃいました。面白い使い方ですが、かなり手間がかかります。そこで、「かきかたプリントメーカー」の画面上ですぐになぞり書きができる機能をつけました。
技術協力
リリースしてから3年目となる2022年、かきかたプリントメーカーの技術がまた別の形で役に立つ機会がやってきました。
子供向け教材「凹凸書字ドリル」を出している「できるびより」さんにお声がけいただき、新商品の開発に協力することになったのです。「凹凸書字ドリル」は、なぞり書きをする線の周囲に特殊印刷で小さな盛り上がりがついている教材です。 なかなか鉛筆のコントロールができないお子さんでも、「鉛筆で紙にぐちゃぐちゃの線を書く」から「線をなぞる」に無理なくステップアップできるスグレモノです。この「凹凸書字ドリル」の良さを生かした新商品「凹凸おなまえドリル」の商品開発にあたり、印刷データの生成プログラムや、画面上でおためしできる機能などの開発に協力しました。
これから
こんな具合で、4年間、子供の世話と本業の合間のわずかな時間で開発を続けてきました。最初のユーザーとして新幹線の名前をなぞり書きしていた長女は、今では小学一年生。そして、当時お腹の中にいた次女も文字を書く真似事をするようになりました。子供と一緒にかきかたプリントメーカーも成長してきました。
このサービスを運用しながら、だんだんこのサービスの存在意義がはっきりしてきました。それは「学ぶ人の個性を大切にする教材作りに貢献する」ということ。あらゆる人が自分の興味や目標に合った教材で学べるよう、これからもかきかたプリントメーカーは改良を重ねていきます。
これからもかきかたプリントメーカーをよろしくお願いします。
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